はじめに:暗号資産の税金って、国によってこんなに違う
ビットコインなどの暗号資産にかかる税金は、実は住んでいる国によってまったく違います。
たとえば、「売って利益が出たらしっかり課税する国」もあれば、逆に「暗号資産に税金をまったくかけない国」もあるんです。
なぜこんなに差があるのかというと、国ごとに暗号資産をどう分類するかのルールが違うからです。
ある国では“財産”として扱い、別の国では“通貨”や“金融商品”として扱われることもあります。
その結果、同じようにビットコインを売ったとしても、ある国では税金がかかり、別の国ではゼロになるというケースもあります。
暗号資産にかかる税金の仕組みとは?
ビットコインなどの暗号資産に対する税金は、「どう使ったか」によって変わります。多くの国では、暗号資産を株や不動産と同じ資産として扱い、売ったときに利益が出ればキャピタルゲイン税(譲渡益課税)がかかります。
たとえばこんなケースでは課税対象になります。
- ビットコインを売って利益が出たとき
- 他のコインと交換したとき(例:BTC → ETH)
- マイニングやステーキングで得たコイン(→ 所得税の対象になる国も)
- 暗号資産で商品やサービスを購入したとき
このように、暗号資産の使い方によって「所得税」がかかる場合もあれば、「資産の売却益」として課税されることもあります。
ただし、国ごとにルールがかなり違うのが現状です。
この記事では、いくつかの国の例を紹介していきますが、あくまで一般的な内容です。
実際に税金の申告が必要な場合は、必ずお住まいの国・地域の税理士や専門家に相談してください。
暗号資産が「課税されない」主なケースとは?
暗号資産に税金がかかるのは「利益が出たとき」や「所得として受け取ったとき」ですが、すべての行動が課税対象になるわけではありません。以下のようなケースでは、通常は税金がかかりません。
1.購入して保有しているだけの場合
たとえば、ビットコインを買ってそのまま持ち続けているだけなら、課税されることは基本的にありません。
例:2022年にビットコインを100万円分買って、まだ売っていない → 課税なし
2.自分のウォレット間で送金した場合
暗号資産を複数のウォレットで管理している場合、自分名義のウォレット間で移動するだけなら、売却とはみなされず、課税対象にはなりません。
例:取引所のウォレットから、自分のハードウェアウォレットへビットコインを送金 → 課税なし
各国で異なる「暗号資産への課税」:日本と世界の比較
暗号資産に対する税金は国によってルールが異なります。
ここでは、主要5カ国の特徴をわかりやすく解説します。
1.アメリカ:保有期間によって税率が変わる
アメリカでは、暗号資産は「資産」として扱われ、売却・交換・使用すると課税対象になります。
- 短期保有(1年未満):普通の所得と同じく、10%〜37%の税率
- 長期保有(1年以上):0%、15%、20%のいずれか(所得による)
🔸マイニング・ステーキングの収入は「所得税」として課税。
🔸損失が出た場合、利益と相殺可能(最大3,000ドルを所得控除可)
🔸2025年から、暗号資産取引所が取引履歴を国税庁(IRS)に報告する義務あり(Form 1099-DA)
2.カナダ:利益の50%だけが課税対象
カナダでは、暗号資産は「商品(コモディティ)」とされます。
売却や交換の利益:その50%だけが課税対象(残りの半分は非課税)
マイニング・ステーキングなどの収入:事業所得として課税(最大33%+州税)
損失は将来の利益と相殺できる。
3.イギリス:免税枠あり+収入階層で税率が変化
イギリスでも暗号資産は「資産」として扱われます。
- 年間3,000ポンドまでの利益は非課税(2024年以降)
- それを超えると:
一般所得層:10%のキャピタルゲイン税
高所得層:20%のキャピタルゲイン税
マイニングやステーキングで得た収入には所得税がかかります。損失の控除も可能。
4.オーストラリア:長期保有で優遇あり
オーストラリアでも暗号資産は「資産」として課税されます。
- 短期保有(1年未満):通常の所得として課税(最大45%)
- 長期保有(1年以上):利益の50%が非課税
マイニングやステーキングの報酬も「所得」として課税されます。損失は繰り越し可能。
5.日本:世界でもトップレベルの高税率
日本では、暗号資産で得た利益は「雑所得」として扱われます。
所得に応じて15%〜最大55%まで課税される
損失は他の所得と相殺できないため、注意が必要です
日本のこのルールは、暗号資産投資家にとっては負担が大きく、税率の見直しや長期投資家への優遇制度が議論されている最中です。
税金ゼロ!暗号資産が非課税の国々とは?
「暗号資産にかかる税金が重すぎる…」そんな悩みを持つ投資家の間で、注目を集めているのが暗号資産に税金をかけない国です。
今回は、特に人気の高い3つの非課税国をご紹介します。
1.アラブ首長国連邦(UAE):完全な「暗号フレンドリー国家」
UAEでは、個人に対する暗号資産の所得税・キャピタルゲイン税はゼロ。
- 個人投資家 → 非課税
- ⚠ 企業として活動する場合 → 法人税(最大9%)がかかることも
ドバイやアブダビなどでは、政府も積極的にWeb3やブロックチェーンを支援しており、移住先としても非常に人気です。
2.マルタ:長期投資には最適な環境
マルタは「ブロックチェーン・アイランド」とも呼ばれ、暗号資産の法整備が非常に進んでいる国です。
- 長期保有の利益 → 非課税(ホールド向き)
- ⚠ 短期売買やトレード → 所得税(15〜35%)がかかる
明確なルールがあるため、安心して企業活動ができる国としても知られています。
3.ケイマン諸島
ケイマン諸島では、驚くことに
- 所得税なし
- キャピタルゲイン税なし
- 法人税もなし
そのため、多くの暗号資産ファンドやスタートアップが拠点を置く地域です。個人投資家にとっても「理想の避税地」と言えます。
暗号資産の税制、これからどう変わる?
暗号資産市場が急速に成長する中で、各国政府も「税金のルール作り」に動き出しています。今後、税制はどう変わっていくのでしょうか?注目すべき3つのポイントをご紹介します。
1.規制の明確化が進む
これまで曖昧だった暗号資産の扱いに対して、多くの国が明確なルールを整備し始めています。
- どんな行為に税金がかかるのか
- どんな場合が非課税になるのか
こうした情報がはっきりしてきており、投資家にとっても「見通しを立てやすい環境」に変わりつつあります。
2.取引の報告義務が強化される
税逃れを防ぐために、暗号資産取引所に対する報告義務が世界的に強化されています。
- 米国では「Form 1099-DA」の導入が進行中
- 日本でも取引所の情報提供義務が議論されつつある
これにより、“バレないだろう”は通用しない時代へと向かっています。
3. グローバルな課税ルールの可能性
将来的には、OECDなどの国際機関が主導して、国境を越えた暗号資産課税のガイドラインが整備される可能性もあります。
- タックスヘイブンへの対策
- 国際送金・DeFiにも対応するルール化
「どこにいても、どの通貨でも、適正に課税する」そんな時代が来るかもしれません。